大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(ネ)1164号・昭47年(ネ)554号 判決

控訴人らは、逸失利益の現価算定につき、ラ式によらずホ式を採用すべきものと主張する。しかし、ラ式又はホ式のいずれを採用するかということは、一律に決せられるべきものではなく、損害の公平妥当な負担という見地から(この点は、控訴人ら主張のとおりである。)、具体的事案に応じて、それぞれその選択がなされるべきものと考える。本件の場合、被害者は、死亡当時一〇才七箇月の児童でその就労可能年数は四五年に及ぶのであり、ホ式(年別・複式・利率年五分)によると、就労可能年数が三六年をこえた場合、賠償金元本から生ずる年五分の利息額が年間逸失利益額をこえるという不合理な結果となるので、このような欠陥を生じないラ式(年別・複式)を採用するのが相当である。なお、控訴人らの挙げる最高裁判所の判決は、中間利息の控除にホ式を用いる場合、年ごとに得べき利得が確定されているかぎり、単式によるのは相当でなく複式によるべきことを判示するに止まり、ホ式以外の計算法を否定する趣旨を含むものではない。又本件被害者は、一〇才余の児童で控訴人らの扶養を受けていたのであるから、控訴人らが本件損害賠償金を複利で利殖できる状況にないものとは言い得ない。さらに、控訴人らが、ホ式を採用すべしとする他の論拠を検討しても、本件の場合、ラ式によらずホ式を採用すべき合理的理由を見出し得ないから、控訴人らの前記主張は採ることができない。

被控訴人は、孝が一八才に達するまでの養育費を逸失利益から控除すべきであると主張する。しかし、右養育費は、同人がその逸失利益の中から支弁するものではないから、これを逸失利益を得るための必要経費というのは該らないし、又養育費の支出を免れるのは控訴人らであり孝ではないから、被害者本人に生じた利得をその損害より控除すべき損益相殺の法理を、この場合に適用することもできない。確かに、控訴人らは、孝の死亡により、同人の逸失利益による損害賠償請求権を相続しながら、養育費の支出を免れているのであり、公平の見地よりして、右支出を免れたことによる利得を逸失利益から控除すべしとの論は傾聴すべきものであるが、前記逸失利益額が初任給固定方式に従い二二〇万余円に止まっていることも考慮するならば、右公平の見地からしても、本件の場合は、非控除説を採るのが相当であると考える。

(谷口茂 綿引 宍戸)

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